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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

花はどこへ行った -- タイの労働事情

 表題は、かつて一世を風靡した曲の題名なので、団塊世代の方ならだれでもご存知だろう。アメリカン・フォークの父と言われたピート・シーガーの曲が後になって多少書き換えられ、ピーター・ポール&マリーのカバーでベトナム反戦運動のテーマソングとして受け入れられ、大ヒットした。日本の多くのフォーク歌手もカバーしている。

 いつの世もどの国でも、経済の活力を支えるのは若年労働力であって、これを経済の華と言っても良いだろう。人口6,800万の若い国で早くも人手不足とは、いかにこの国が急速な発展を遂げているかの証ではもちろんあるのだが、経営者としては深刻な事態である。

 4~5年前、すでに隣国との国境に近い工業地域、つまり東のラヨン県(カンボジアに近い)やバンコク西方のマハチャイ(魚介類加工が集中、ミャンマー方面)では、どこへ行っても外国人労働者だらけであったがその時点では、「タイ人はすでに3Kの職には就きたがらない」と、まだ職業選択の問題という程度の認識だった。

 しかしその後、政府のばらまき政策(市場価格を大幅に上回る価格でのコメ買い上げ、但し現在では財政逼迫により支払いが不可能になった)により収入増となった農村への移動、直接投資の急激な増加、そして更なる建築ラッシュ、つまり労働需要の拡大により現業職、サービス業、事務職と業種に関わらず人材の確保に苦慮する時代が訪れた。

 近隣国の労働者は合法・非合法の区別なく流入を続け、建築現場はカンボジア人ばかり、街のレストランでは「どうもタイ語が怪しいな?」と思うウェイター、ウェイトレスさんがかなり増え彼(彼女)らは皆ミャンマー人だ。

 事務職は転職花盛り。我が事務所でも常時募集を行っているが、職歴を見ると恐ろしい人たちを目にすることになる。3本の指に数えられる国立大学を卒業後、転職を繰り返し2年間で4倍の給与増、見た目も学歴もスキルも素晴らしい。人材紹介会社のコメントは「責任あるポジションを即戦力でこなせる優秀な人です」しかしこの転職症候群患者を「責任あるポジション」に誰が迎えるのか疑問だ。

 この様な状況であるから、人材紹介業者は人材さえいれば(もちろんここがネックだが)右から左へ情報を流すだけで入れ食い状態だとは容易に想像できる。先日などは社員を紹介してきた当の業者が本人に電話をかけて来て(言っておくが日系の企業である)、「転職後1年を経過しましたが、そろそろ再度転職する気はありませんか?」と転職勧誘を仕掛けてくる始末。企業コンプライアンスも仁義も地に落ちたかと思うが、いちいち噛みつくのも大人げないので、この様な場で小さく訴えるのが関の山だ。

 以前より巷で言われていたことでもあるのだが、タイ人は数百円でも給与が上がるのなら躊躇いなく転職する、上記の事例を含めこれは一面の事実である。しかしながら安心して働ける、社員を大切に温かく扱ってくれる、マネージメントも風通しが良く居心地の良い会社という様な経営努力が一切無視される程、“金が全て”の世界に変貌してしまった訳ではない。やはり気持ち良く働ける会社で落ち着いて仕事をしたいという当たり前の感情は皆持っている訳で、コミュニケーションの努力は報われる優しい人たちの暮らす仏教徒社会であることに変わりはない。

 新規進出企業も恐れることは無いので、今後もアセアンのハブとして発展を加速する微笑みの国タイへ、どうぞいらしてください。

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