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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

アセアン経済共同体 AEC

 多くのメディアで取りざたされているこの件については、今年内の実行化がすでに決定事項となっており、域内各国では様々な産業分野での取り組みが始まっている。これにより域内10か国が一つに纏まり、人口6億人を超える一大経済圏が誕生する。

 AECは欧州EUのアジア版とも云われるが、「統一通貨は設けない」「ヒトの移動は熟練労働者に限定」という緩やかな結びつきにより経済の活性化を目指すという特色がある。

1 ヒト・モノ・カネ移動の自由化・競争力のある経済地域

 関税の撤廃については順調に進められており、先発加盟国であるタイ・シンガポール・マレーシアなどでは2010年より0%が達成されており、後発加盟国に於いても2015年内に原則撤廃、という方針が決定された。ただし後発国にとって関税収入が重要な歳入であることから、新たな非関税障壁が設けられる可能性は否めない。

 モノの移動で重要なファクターである基幹インフラであるが、こちらは経済回廊の整備がほぼ完工している。ベトナムからラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ東西経済回廊、中国雲南省からバンコクを結ぶ南北経済回廊、ベトナム、カンボジアからバンコク(バンコク~ミャンマー・ダウェーを開発中)を結ぶ南部経済回廊が挙げられるが、つまりすべての物流の中心となる国がタイなのである。この結果、現在製造業が投資を進めているのがタイ・プラスワンであるカンボジア、ミャンマーであり、すでにタイに拠点を置くメーカーが、労働集約部分の製造を人件費の安い周辺国で行い、タイの拠点へ陸送し完成品とするサプライチェーンの構築を目指している。また新規投資だけではなく、部品メーカーが関税撤廃による競争力強化により、域内各国における市場開拓に乗り出す例は格段に増えてゆくであろう。これらの域内協力によってコスト削減を図り、アセアンを競争力のある経済地域に押し上げるのがAECの大目的の一つである。

 モノ以外の移動、「投資」や「労働力」についての進捗は、滞っていると言わざるを得ない。カンボジア以外の加盟国に於いてはそれぞれの国内法により外資規制が定められており、現状ではロジスティックス等(外資比率70%までの緩和)ほんの一部の分野でしか実現していない。

 労働力についても、当初より熟練労働者のみが対象となっている。現在、エンジニアリング、看護、建築、測量、会計、開業医、歯科医、観光の専門8業種について協定が締結されているが、実行には至っていない。

2 公平な経済発展・グローバル経済への統合

 公平な経済発展については中小企業支援等のプログラムを展開しているが、現状域内国のGDP格差が非常に大きいことから、先ずは主要国の都市圏における消費意欲旺盛な中間層の拡大、所得の増大による大市場としてのプレゼンスを築くことが中心課題となるであろう。

 グローバル経済の統合という意味では、すでに周辺地域との間で「自由貿易協定 FTA」を締結している。

3 日系企業にとってのAEC

 当然のことながら、製品やサービスにおいて抜きん出ている日系企業にとっては今後大きなビジネスチャンスとなることは間違いない。しかし現状で域内投資を積極的に展開し、機動力を示しているのは域内主要国の大企業であり、高品質製品の生産に特化されている日本勢はその機動性に於いて遅れを取っている。今後は現地市場、消費者の特性を把握した上で積極的かつスピーディーな事業戦略が求められるのではないだろうか。

 以上に述べた通り、AECの体制は構築途上にあり、これからも緩やかに進展していくことは間違いない。

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