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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

暫定政権による綱紀粛正政策

 本年5月末近く、陸軍司令官によるクーデター、そして司令官自身による暫定政権樹立、組閣が行われ、それは多くの市民に歓迎された。そして政治騒動に明け暮れた半年間にもたらされた景気悪化、行政の停滞そして集票の為に前政権が行ったバラまき政策による負の遺産からの脱却に対する新暫定政権の努力は、景気回復と相まって当地の各方面から高評価を受けている。

 バラまき政策①初めて車を購入する者に対する自動車税減税―駆け込み需要が去った後自動車売り上げは激減した。②大票田である農民に対し、市場価格を大きく上回るコメの買取―財政が傾き代金は不払いとなりデモ騒ぎ寸前、新政権が支払いを確約し解散させ、間もなく支払も実施された。この件で前首相は刑事起訴される可能性がある。③全国の小中学生に対するモバイル・タブレットの無料配布― 一部で実施されたが、ゲーム機としてしか使用されない、または親が取り上げて現金化してしまうケースが続出した。

 その後、現政権は次々と綱紀粛正政策を粛々と進めている。と、ほぼ良いこと尽くめであるにはあるのだが、既存の日系企業および進出企業、またそのサポートを行う我々にとって、有り難くない波も押し寄せて来た。綱紀粛正であるのだから、官公庁職員による収賄行為には厳罰を以て臨む、のは良い。しかし手続きの現場で、何でもカンでも不備を指摘して手間をかけさせるというのは如何なものか?我々が現場で面食らう様なケースも続出している。

1 法人設立登記と税務登録 登記上の住所について、所有者から間接的に物件を賃貸し営業を行う、または仮事務所として一時的に小さなスペースを賃貸する、というケースはよくある。従来は賃貸契約書の代わりに施設使用許可状を所有者が発行することが認められていたが、これが通らない。さらに又借りの賃貸契約書を作成し、従って賃貸料の請求も起こさなければならない。
  法人登記後、管轄税務署に於いて税務登録を行う際、すでに商業省登記局にて申請受理された内容について、例えば社印の印影について税務官が物申す。これは管轄違い。それはすでに受理した登記局に対し直接意見すべきと撥ね付ける。

2 投資委員会奨励プロジェクト
  奨励を受けているプロジェクトに関して、事業が申請通りに行われているのかを厳正に調査する。現在ITプロジェクトとして過去に認可を受けた多くの日系企業が調査を受けている。本来の奨励事業はソフトウェア開発に限定されたものであるのだが、奨励のための審査は甘く、奨励を受けたプロジェクトの多くは一からの開発ではなく、既存ソフトのカスタマイズ販売、メンテナンスが主事業である。元より奨励委員会の成績は奨励を与えた直接投資総額であり、実績を上げるため半ば承知の上で奨励を乱発してきたのは当の委員会に他ならない。何を今更、手の平を返したように開発の実績を示すエビデンスを提出しろなどと云えるのか?しかしこちらもビジネスの一環なので、あれこれクライアントと画策し、小さな実績を大きく見せる様なデータ作りをアドバイスし、担当官には「お奉行様、あっしらもお達しの通り商いが出来る様精進してめいりやしたが、何と申しましてもこのご時世、これと決めた型通りの商売ではおまんまの食い上げ、これではおっかあやせがれ共も腹を空かせて泣くばかりでごぜいやす。ここはお奉行様のご慈悲をもって、なにとぞ今しばらくのご猶予を~。このとおりで~」と額をお白洲の砂にこすりつけてお願いする日々である。溜息が出る。

 とは云え、万が一委員会の奨励が取り消される事態になろうが、大事業なら商業省の「外国人事業許可」を申請するなり、小規模の法人であれば現地側出資のリスクを躱すテクニックを駆使し現地法人化するなり、運営継続の方法は心得ている。

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