弊社役員執筆の下記著書につきまして、すでにクラウドファンディング上での支援者募集は終了しておりますが、
ペーパーバック2,000円、電子書籍1,500円にてご注文を承っております。
https://camp-fire.jp/projects/view/547272
「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

法人設立→会計税務・経営管理にまつわるQ&A 1

1 「駐在員の日本給与立替精算に係る税務」について
Q 昨今は日本の税務署も、駐在員に支払う駐在期間に於ける日本給与について、駐在国に於ける費用とすべきという方針を徹底しつつあります。ただつい最近になって現地法人より、立替給与精算においても税務申告が必要になったとの報告がありました。
 どの様な内容なのかご教示いただけますでしょうか?

A 従来、立替精算については税務申告の対象外というのが共通認識でした。言わずもがな、現地法人の費用を日本法人が立て替えた→現地法人は日本法人に返済した、これだけのことです。何の消費も利益も生じていません。しかし2~3か月前より、「税務署から源泉徴収とVATの申告をすべきとの指摘を受けた」という話を耳にする様になりました。当初私は当然のことながら、「単なる立替精算に課税されることはあり得ない」と主張し無視していました。ところが最近になって、当局は「送金先である外国法人は、
送金元の現地法人に対し派遣業務と同様のことを行っているので、これは利益送金と見做す」と、信じ難い見解を示し、送金時には源泉徴収を行い、翌月に申告納税、同時にVATも発生するとして納税(ただし同時に還付分に加算)という、海外に対するサービス料送金と同様の手続きを義務としました。全く納得のいかない内容ですが、当面従う他無いと思います。

2 「受注取消により生じたコストの請求」について
Q 当社は電子部品の製造を行っておりますが、この度顧客側の都合により受注が取り消され、弊社としてはすでに親会社より主要な部品を輸入しており、しかもこれらは他製品に流用できない物で、大きな損害が生じました。この処理方法として、親会社からのコストの請求を受け、さらに顧客に対して請求を行わなければなりません。どの様な証憑を発行したら良いか、また通常の販売とは異なる税務処理がありましたらアドバイスお願いします。

A 先ず仕入に対する親会社からの請求ですが、通常のインボイスまたはデビットノートを発行してもらって下さい。また、御社から顧客へは、インボイスを発行します。その際、これは損害に対する補てん請求ですのでVATは発生しません。

時事コラム2015-2016 第6回「偽ブランド品は無くならない」

身の回りで当たり前に売られていることから、ついついその違法性を忘れがちなのだが、先週3月31日のニュースによれば、当局はバンコク郊外において、押収した偽ブランド品、違法コピー品を1,245,000点、重量にして126トンを破棄処分する式典を行った。

対象となった商品は、衣類、腕時計、携帯電話や映画DVD、コンピューターソフトなどである。

業務用ソフトについてはすでに約10年以上前より政府より委託された民間会社が訪問調査を行い、使用が発覚すれば大枚の罰則金を科すようになったため、正規品を購入するという認識が広まっている。知り合いの日系企業でも以前、会社で購入した基本ソフトは正規品であったが、社員が勝手にコピー・ソフトウェアをダウンロードして使用しており、発覚した1点につき約8,000バーツ、合計約100,000バーツの罰則金を科された例がある。しかしこの調査も個人使用までは及ばず、街のITモールでは相変わらず違法ソフト専門の小売店が堂々と営業している。 

衣料品や腕時計、バッグに関していえばこれは観光客市場よりも庶民の間で完全に定着しており、大市場がある以上これが根絶やしになる日はと考えても予想だにできない。私も電車内でブランド品を見かけると、必ずストラップや部分品を品定めして正規品かどうかを検証する癖がついてしまっている。まず部品の断面を見れば、皮革製なのかPVC(塩化ビニル)製なのかで判断がつくからである。

このような商品を扱う小売店は、観光客向け露店(パッポンやシーロム通り)、都心の大規模ショッピング・モール(マーブンクロン)、郊外の大規模市場(東京ドームより大きいであろうチャトゥチャク)など、一見すれば明白だがその数量から考えてこれを一挙に潰そうなどとは、民業への影響を考えれば、とてもとても当局担当者もその様な勇気を持ちえないであろうことは想像に難くない。但し私は決してこの様なエリアでの買い物をお勧めしている訳ではない。悪しからず。

時事コラム2015-2016 第5回「国境SEZ(特別経済開発区)」

現政権が昨年の発足時より進めてきた、カンボジア、マレーシア、ミャンマー、ラオス各国との国境に設置される特別経済開発区(以下、SEZ)が、着実に制度化され、進んでいる。その目的は先ず、①AEC(アセアン実効化)の成果を確実なものにすること、②バンコク周辺の開発一極集中からの分散化であろう。

特に①については、AECの主目的であるカネ、ヒト、モノの自由な流通を促すためタイ政府が行ってきたアジア経済回廊へのインフラ投資の成果として注目すべきものだ。さらにこのSEZ地域以外においては制限されている「近隣国からの非熟練労働者雇用」を自由化した。これらの政策によりアセアンの巨大市場を活性化させるという成果は、想像に難くない。
SEZ指定地域は、
西のミャンマー国境にターク県(タイ中部の古都スコータイの西方)、カンチャナブリ県(バンコクの西方、戦場に架ける橋で有名な観光地)、北にはチェンライ県(中国方面から南下したタイ王朝が最初に国を打ち立てた地域)、東北のラオス国境にはノンカイ県(メコン川を挟みラオスの首都ヴィエンチャンを望む地域)、少し南下したナコンパノム県・ムクダハン県(こちらもノンカイ同様、ラオスとタイを隔てるメコン川に友好橋が架けられている)、東のカンボジア国境のサケオ県(ベトナム戦争時、多くのインドシナ難民キャンプが設置されていた地域)、カンボジア国境の南端に当たる、海に面したトラート県、そしてタイ南部マレーシア国境のナラティワートとソンクラー県である。

またタイ投資委員会(BOI)も当政策に歩調を合わせ、投資奨励策の変更を実行している。
先ず、SEZ10地域それぞれにおける地域性を考慮した奨励業種を定め、この地域内で指定奨励業種への投資を行えばBOIから付与される恩典を手厚くする、また1015年1月よりすでに廃止されている6業種(家畜飼料とその成分製造、建設用資材および高圧コンクリート製品の製造、ボディーケア製品の製造、日用プラスチック製品の製造、パルプあるいは紙製品の製造、工場・倉庫用の建物開発をこの指定地域限定で復活させた。
z1
また通常のBOI奨励業種においても、SEZで投資を行えば恩典を手厚くするという政策も発表されいる。すでに労務費が高騰し高付加価値製造品でなければ市場競争力を失ったアセアン内での先進地域と、まさにこれから労働集約産業を定着させようという後進地域が協力し、産業と市場の活性化を図るには、的を得た政策だと考える。ただしアセアン地域全体としては、ECの轍を踏まぬ為の施策を十分に考慮すべきだろう。

時事コラム2015-2016 第4回「新憲法制定の行方」

2014年5月22日の軍部による政権成立(いわゆるクーデター、これを単に非民主的な独裁制と言いきれない事情は過去の記事で述べた通り)以降、新憲法法案を巡ってはこれまで政党間または内閣と政党や関連委員会の間で議論が繰り返されている。

新憲法草案委員会(CDC)は、すでに草案の95%は完成しており間もなく全容を明らかにすると発表しているが、依然大きな対立点は解消されておらず、行方は分からない。

先ず第一に草案第44条「治安大権」、これはこれまでの政治騒乱の経験から、治安維持の為緊急の判断が必要となった場合には、必要な手続きを経ずに政権が判断を下し、その決定に従って行政が動くことを目的としている。つまり「いわゆる軍部によるクーデター」を反民主的行動として国内外から批判されることを回避し、合法的な行為と憲法で定めてしまおうということである。理解できぬでもないが、やはり非民主的行為を成文上で合法化するという意味で国民に受け入れられるのは困難ではなかろうか。しかも最近の議論では、全国的な発電所建設の決定までのこ大権に含めようという意見まで出ている。これは理解に苦しむ議論で、やはり為政者の利権確保が目的ではないかという気もする。

第二は、「非国会議員の政府首班任命」。これも選挙の意義を大きく損ねる事態を招きかねず、言うまでも無く議院内閣制の完全否定である。

これらは新憲法制定→総選挙実施→新政権成立後の政治騒乱を想定した制度固め、という意味で一面では理解できるものの、これが国民に理解されるかどうか疑問ではある。つまり一般の民主主義国家ではその基礎である選挙というものが、そもそもこの国では買収行為によって無意味にされ、カネで政権を買うことが実際に起こり、その結果利益享受派と知識層との間で政治騒乱を繰り返すというストーリーを経てきたことが、すべての苦悩の原因なのだ。

しかしもう一つの側面として、以上に挙げた様な政治と行政システムの内容まで一国の憲法に定める必要性があるのか、もちろん法制論上では否である。通常これらは一般法で定められるべきと考えるが、これも上記と同様、選挙後の新政権に対し予め不信を抱かざるを得ず、従って新憲法上で予め皆法制化してしまえ、という意思の表れであろうことを、ここまで筆を進めて思い当たった次第である。

委員会の方針では、7月にも新憲法に対する国民投票が行われる、ということになっている。

時事コラム2015-2016 第3回「日本から鉄道システム輸出」

シーメンス社製のBTS車両
JR東日本は丸紅・東芝との共同出資会社をタイに設立、この企業によりタイの高架電車BTS(Bangkok Mass Transit System)の新設ラインに車両を提供、併せ信号・軌道・電力・ホームドア・自動運賃収受システム・車両基地等におけるメンテナンスまでの一式を受注、2016年に開業することが決定した。

海外の鉄道システム一式供給契約は日本にとって初めてのことである。これまでBTSは、ドイツ・シーメンスの牙城であったのだから、我々在留邦人の面目躍如、でもある。ただしバンス―地区からバンヤイ地区は、残念ながら我々にとっては殆どご縁の無い地区なのだが。バンスーというとタイ最王手、しかも王室系財閥である「サイアム・セメント」の企業城下町として有名だ。バンヤイはと云えば、申し訳ないがこのニュースを見聞きするまでは全く知らなかったというのが正直なところ。都心からは北西の方角にある。
 
車両そのものはJ-TREC(株式会社総合車両製作所)が供給することになっている。耳慣れない社名だが、2011年設立のJR東日本100%資本の車両メーカーらしい。

バンコク市内の大量輸送機関自体まだ歴史が浅く、1999年にこのBTSの運行が開始されたのが最初で、その後地下鉄のMRTが開通した。運営主体はどちらもBMCL社(Bangkok Metro Public Co., Ltd.)である。それ以前のバンコク庶民の足は、路線バスのみであった。タイ国鉄も市内を走ってはいるが、本数も路線も極端に少なく利用価値は薄い。かつて私は北タイのチェンマイ発バンコク行きの車両を2両チャーターした経験があり、当然団体を引き連れホームで待機していたのだが、入ってきたその列車から切符に記載されたNO.の車両がそっくり抜けており、冷や汗どころか倒れそうになった。

結局車両NO.が違っていただけで問題なく乗車できたのだが、まあその様な緩い時代であったということだ。
日本の鉄道システムの優秀さは広く知られ、すでに上述のバンコク⇔チェンマイ間の高速鉄道受注も報じられている。