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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

時事コラム2015-2016 第5回「国境SEZ(特別経済開発区)」

現政権が昨年の発足時より進めてきた、カンボジア、マレーシア、ミャンマー、ラオス各国との国境に設置される特別経済開発区(以下、SEZ)が、着実に制度化され、進んでいる。その目的は先ず、①AEC(アセアン実効化)の成果を確実なものにすること、②バンコク周辺の開発一極集中からの分散化であろう。

特に①については、AECの主目的であるカネ、ヒト、モノの自由な流通を促すためタイ政府が行ってきたアジア経済回廊へのインフラ投資の成果として注目すべきものだ。さらにこのSEZ地域以外においては制限されている「近隣国からの非熟練労働者雇用」を自由化した。これらの政策によりアセアンの巨大市場を活性化させるという成果は、想像に難くない。
SEZ指定地域は、
西のミャンマー国境にターク県(タイ中部の古都スコータイの西方)、カンチャナブリ県(バンコクの西方、戦場に架ける橋で有名な観光地)、北にはチェンライ県(中国方面から南下したタイ王朝が最初に国を打ち立てた地域)、東北のラオス国境にはノンカイ県(メコン川を挟みラオスの首都ヴィエンチャンを望む地域)、少し南下したナコンパノム県・ムクダハン県(こちらもノンカイ同様、ラオスとタイを隔てるメコン川に友好橋が架けられている)、東のカンボジア国境のサケオ県(ベトナム戦争時、多くのインドシナ難民キャンプが設置されていた地域)、カンボジア国境の南端に当たる、海に面したトラート県、そしてタイ南部マレーシア国境のナラティワートとソンクラー県である。

またタイ投資委員会(BOI)も当政策に歩調を合わせ、投資奨励策の変更を実行している。
先ず、SEZ10地域それぞれにおける地域性を考慮した奨励業種を定め、この地域内で指定奨励業種への投資を行えばBOIから付与される恩典を手厚くする、また1015年1月よりすでに廃止されている6業種(家畜飼料とその成分製造、建設用資材および高圧コンクリート製品の製造、ボディーケア製品の製造、日用プラスチック製品の製造、パルプあるいは紙製品の製造、工場・倉庫用の建物開発をこの指定地域限定で復活させた。
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また通常のBOI奨励業種においても、SEZで投資を行えば恩典を手厚くするという政策も発表されいる。すでに労務費が高騰し高付加価値製造品でなければ市場競争力を失ったアセアン内での先進地域と、まさにこれから労働集約産業を定着させようという後進地域が協力し、産業と市場の活性化を図るには、的を得た政策だと考える。ただしアセアン地域全体としては、ECの轍を踏まぬ為の施策を十分に考慮すべきだろう。