2014年5月22日の軍部による政権成立(いわゆるクーデター、これを単に非民主的な独裁制と言いきれない事情は過去の記事で述べた通り)以降、新憲法法案を巡ってはこれまで政党間または内閣と政党や関連委員会の間で議論が繰り返されている。
新憲法草案委員会(CDC)は、すでに草案の95%は完成しており間もなく全容を明らかにすると発表しているが、依然大きな対立点は解消されておらず、行方は分からない。
先ず第一に草案第44条「治安大権」、これはこれまでの政治騒乱の経験から、治安維持の為緊急の判断が必要となった場合には、必要な手続きを経ずに政権が判断を下し、その決定に従って行政が動くことを目的としている。つまり「いわゆる軍部によるクーデター」を反民主的行動として国内外から批判されることを回避し、合法的な行為と憲法で定めてしまおうということである。理解できぬでもないが、やはり非民主的行為を成文上で合法化するという意味で国民に受け入れられるのは困難ではなかろうか。しかも最近の議論では、全国的な発電所建設の決定までのこ大権に含めようという意見まで出ている。これは理解に苦しむ議論で、やはり為政者の利権確保が目的ではないかという気もする。
第二は、「非国会議員の政府首班任命」。これも選挙の意義を大きく損ねる事態を招きかねず、言うまでも無く議院内閣制の完全否定である。
これらは新憲法制定→総選挙実施→新政権成立後の政治騒乱を想定した制度固め、という意味で一面では理解できるものの、これが国民に理解されるかどうか疑問ではある。つまり一般の民主主義国家ではその基礎である選挙というものが、そもそもこの国では買収行為によって無意味にされ、カネで政権を買うことが実際に起こり、その結果利益享受派と知識層との間で政治騒乱を繰り返すというストーリーを経てきたことが、すべての苦悩の原因なのだ。
しかしもう一つの側面として、以上に挙げた様な政治と行政システムの内容まで一国の憲法に定める必要性があるのか、もちろん法制論上では否である。通常これらは一般法で定められるべきと考えるが、これも上記と同様、選挙後の新政権に対し予め不信を抱かざるを得ず、従って新憲法上で予め皆法制化してしまえ、という意思の表れであろうことを、ここまで筆を進めて思い当たった次第である。
委員会の方針では、7月にも新憲法に対する国民投票が行われる、ということになっている。