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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

近隣国からタイへの出稼ぎ労働者状況

近年、タイ国内の工場においての労働力不足が深刻な状況であると常に取り沙汰される様になった。統計によれば、ベビーブーム世代がすでに35~45歳に達し、工場労働力としては壮年であり、新規の労働力には適さない。また農業による収入が改善され、労働者の収入との差が縮小された、等々が要因とされている。前者については、現地事情をあずかり知らない日本人には理解しにくいのだが、まだまだ当地の平均寿命は短く、中高年で単純労働に就くことは考えられず、また一方で子が親の生活を支えることは全く当たり前のことであるという習慣も影響しているであろう。まだ40代の父母を養うため、学歴のない娘さん、息子さんたちがバンコクで昼夜を問わず働く、という姿はある意味日本の社会が失ってしまった美談にも聞こえるが、これがタイの身分制社会、悪く言えば貧乏の連鎖を固定化している大きな要因であることも確かだ。

話が逸れた。1990年台前半、シンガポールは20万人の外国人労働者に労働許可を与え、マレーシアは47万人の不法労働者を合法化し、台湾は12万人に対し確定条件の契約書を発行した。そのような諸外国をよそ目に、タイは陸路にて入国してくる近隣国、ミャンマー、ラオス、カンボジアの不法労働者を半ば黙認してきた格好だ。

以後、タイ政府はクォーター制(人数と期間に制限を設け各国に割り当て、正規労働者として受け入れる制度)を設け、順次クォーター枠を拡大し対応してきた。そして現在、
ミャンマー55万人、カンボジア15万人、ラオス5~6万人が正規に労働をしているとのこと。ミャンマー労働者の大きな部分はやはり地域的に近いタイ西部での水産物加工、あるいは漁業関連業務に就き、カンボジア労働者の多くは東部のラバー・ウッドあるいは再生ボードを材料とした家具工場またはゴム・プランテーションでの採集作業関連で働いている。また、すでにバンコクでも日常的に見かける様になったのは、建築現場や内装現場でのカンボジア人労働者と、ミャンマー人ウェイトレスである。

特にミャンマー人の現業職レベルでの評判は押し並べて非常に良く、「タイの田舎で募ったウェイトレスさんの教育は苦労の連続であったが、ミャンマー人女性を雇い始めてからは本当に楽が出来る様になった」とはある和食レストラン主人の弁である。1バーツ(タイの通貨)の貨幣価値が格段に高い国から来た両国の人々であるが、雇用者から言うと、ミャンマーの人に軍配が上がる様だ。ラオスの人たちについては、元より人口の少ない国であって、出稼ぎ者も少ないためあまりお目にかからない。

これらの人々がタイにおける工業の担い手となる為には、国策として彼らの就業能力をボトムアップすべく研修を行うべきと私は考えるのだが、今のところその様な計画は無い様だ。云わばすべて民間任せである。私は決してすべての身分制度を否定するものでは無いが、それがこの国の背負った昔からの身分制度の、そのまた底辺の階層を形成するようなことにはなって欲しく無い。私自身も、セーフティー・ネット政策の無いこの国に住む外国人の一人であるのだから。

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