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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

タイ法人経営の妙

 当地にて経営管理に当たる上で結構耳にする従業員の不正、全く大きなものから小さなものまで、様々なケースに遭遇する。

 一番身近なものでは、購買の際に業者から支払われるキックバックが挙げられる。会社や工場では事務消耗品、備品、飲食店では生鮮品・食材等、少額のケースが多いのだが、当然会社規模に応じ大金になってしまう場合もある。また破棄品の金属スクラップ売価のごまかしもよくある話。

 酷い話では商品そのものが流出するケースもある。かつて日本の有名玩具メーカーの工場敷地沿いにピックアップ・トラックを駐車し、夜中に夜勤の社員が敷地内から商品をポンポンと放り投げ、トラック満載にして走り去った、という噂を聞いた。警備員がグルになるというのも珍しくない。

 手の込んだ犯罪もまれに起こっており、ゼネコンの経理事務員がサブコンと結託して、現場へ支払われる建築費が何割も上乗せされ、しかも帳票上は全く矛盾の出ない様細工されていた、という見事(失礼!)な知能犯が1,000万円以上も横領していた事件もあった。

 また日本語が巧みで、日系企業の中間管理職を転々としている人物は要注意だ。当地に慣れていない管理職を手玉に取り、親切にあれこれのセッティングや支払いにすべて関わり、蓋を開けてみれば仮払金のまますべて持ってドロン、この手に味を占めて繰り返し罪を犯す輩もいる。

 また製造業の購買部員が共同出資した会社を立ち上げ、購買物の殆どに商社として絡んでいた、これでは踏んだり蹴ったりである。神も仏も無い。

 これらの不正が長期にわたって続いたという例は少ない。もちろん発覚したからこそ聞こえてきた話だ。売上や原価の推移に気を配れば、不自然さは自ずと見えてくるし、必ずどこかでぼろが出てくるものだ。

 問題は如何に早期発見するかにかかっている。日常業務だけでも大変な管理職稼業ではあるが、数値のチェックだけではなく、要所の社員とのコミュニケーションも大切なことであるし、大口のサプライヤーに対しては、挨拶と称して相手方に出向くなど(もちろん拒否されれば大いに怪しい)の牽制も行った方が良い。切削工場のスクラップ引き渡しには、抜き打ちで立ち会った方が良い。すべての問題は現場で発生している。

 では問題が発覚した場合の対処はどうか。日本人の気質として「穏便に済ませたい」という言葉が必ず出てくるのだが(もちろんここでは親会社に管理不行き届きを悟られたくないという思いが働いている)、それでは管理者が不正を公認したことになり、第二第三の不正行為者を生むことになりかねない。

 また多くの場合、周囲の社員はトラブルに関わることを避けようとする傾向にあるので、不正者との話には弁護士立会いの下に法的なアドバイスを受けながら進めるべきだ。元より管理職者に対抗するのを覚悟の上でおこなったこと、その管理者自身が対峙しても、不正行為者は誠意の無い言い訳に終始し、その場を逃れようとするのは自明の理である。

 その結果、示談では解決不可能と判断した場合、一旦刑事事件として警察へ持ち込み、今度は警察官の事情聴取から始まり、もちろん刑事起訴も視野内だが、起訴してしまえば返済請求が不可能となるので、警察官立会いの上での示談、という方法がある。これは半ば強制力として効果がある。

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