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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

コラム「肥満」

現在タイの人々の肥満率は40%を超え、アジアのトップクラスだという。確かに私が初めて訪れた1980年代のイメージではとてもスマートな人たちであったが、10年前くらいからか極度に肥満している人は全く珍しくも無くなった。さらに運動不足が影響し、膝を痛めて不自由な歩き方をしている年配の方を本当によく見かける。

原因は知られている通り食生活の変化で、油分と糖分が高いタイ料理を、豊かになったことから大量に取ってしまうことと運動不足である。かつて親戚がバンコクに滞在した時(私の結婚式のためだったかも知れない)、少しのおかずで大釜いっぱいのごはんを平らげてくれるのに驚いたものだが、あれから特にバンコクのタイ料理の味付けはどんどん甘くなり、今では外食のタイ料理というものを食さなくなった。これは高カロリーを避けるという意味ではなく、甘くするべきでない料理が甘いのは受け入れられないということだ。唯一イサーン(東北地方)の料理だけは全く甘くない味の店もあるので、その様な店を選ぶことにしている。イサーン料理にしてもバンコクナイズされた店は概ね甘味になっているので避けるしかない。本来の素朴な味(大抵かなり辛い)や佇まいを保っている店、ということになる。

最近では、僧侶までが肥満に悩んでいるという。食事はすべて托鉢で賄うというのが戒律に沿った生活であるから、そこに選択の余地はなく、信者が「徳を積む」為に毎朝寄進したものを食すのみである。しかし元より午前中に一回だけの食事で暮らす筈の僧たちであるから、1日一食で肥満するものなのか。その戒律が守られなくなっているのか、その一食が大量なのか、あるいはその生活パターンが却って肥満を招くのか、その辺りは来週早々に会う予定である友人(現職の僧、タイの修行僧が職なのかは不明)に会うので聞いてみようと思う。とにかく寄進されるタイカレーなどの食事や菓子類がかなりの高油脂・高糖分らしい。
 
我々の世代から下では、健康維持を意識し日々運動を心がけている者も多いが、そこは個人主義の国、気を付けて生活する側と全く意に介さない側がはっきり分かれていることと想像する。例えば、小中学校の体育教科なども積極的では無いのではないか。社員旅行で海へ行くこともままあるのだが、全く水にも入らない数人の社員が一日ただ座って景色を眺めている光景は象徴的だ。

「税務署や金融機関の国際情報交換」について

Q: 以前より各国の税務署間で情報交換が行われているという話は耳にしておりましたが、現状ではどの様になっているのでしょうか?

A: そうですね。5年前位からでしょうか、日本の個人給与額も含む情報交換が各国の税務署間で行われていました。それがここへ来まして、対象は金融機関、証券会社にまで広がっています。規定ではその目的を「当該各国の相応機関の税徴収、税法の施行手続に関連し、便益を享受する」ことに限られています。また情報交換を要求する契約国の相応機関は要求書を作成し、タイ国の関係機関に送付しなければならない、とされています。この様な随時の要求に応ずる情報交換の他に、定期的な財務情報の報告も義務付けられています。
 この動きにより、給与合算申告や価格移転に対する税務調査が加速してゆく可能性があります。

**お知らせ**
「源泉徴収税率軽減措置の継続」
 2020年4月より軽減措置が実施されている源泉徴収税率が、2023年1月1日より1%(法定上は3%)で引き続き2025年12月31日まで継続されます。施行令は3月付にて発出されましたが、歳入局より事前に各社会計担当宛て情報が出されている筈ですので、問題はありません。
 対象となる所得は下記の通りです。
① 40条(2) 人的役務提供報酬、仲介手数料、相談料、顧問料他)
② 40条(3) ロイヤリティー、技術指導料他
③ 40条(6) 専門職費用
④ 40条(7) 請負報酬
⑤ 40条(8) その他サービス料  

<タイの税務関連記事>
タイに於ける税務の特徴

「税還付請求に対する税務調査」について

Q 弊社は製造業ですが、半年ほど前に付加価値税の還付申請を行ったところ、先週になってこの還付に対する税務調査を行うとのことで、出頭要請がありました。弊社の業績は不振でずっと赤字続きなのですが、この様なケースの税務調査に対する心構えなどアドバイスいただければ有難いです。

A 全く不合理な話ではあるのですが、2年前に歳入省が行った減免税プログラム(2016年4月月報に掲載)の影響で税収減となり、しかもその際このプログラムに登録した中小企業に対しては2018年1月1日に開始される会計年度まで一般税務調査は行わないことになっており、その結果税還付申請に対する税務調査は異常に厳しい態度で実施されています。

とくに赤字申告の企業に対しては、全く還付をしないレベルまで損金を自己否認・修正申告をさせるか、繰越欠損金をほぼ全額放棄させるか、その様なお達しが出され、各管轄税務署もこれに従っている様です。
似た様な事態は1997年の通貨危機以降にも経験しておりますが、税務署の態度は財政の事情によりあからさまですし、またその様なやり方も「税務官の裁量権」により公に認められていますので、日本人経営者としては全く受け入れ難い要求をされても、揉め事にならない範囲でじっくりと腰を据えて交渉に当たるべきだと思います。

税務官は他件も抱えているので早く実績を上げようと御社の同意を急かしてきますし、ローカル・スタッフも役人を恐れる傾向にあり、経営側に同意を促してきますが、納税者側に急ぐ理由は無いので、逆にあれこれと交渉を持ちかけ焦らすことで少しでも妥協を勝ち取る戦略ともなります。もちろん納税者には不服申し立ての権利が認められています。

法人設立→会計税務・経営管理にまつわるQ&A 1

1 「駐在員の日本給与立替精算に係る税務」について
Q 昨今は日本の税務署も、駐在員に支払う駐在期間に於ける日本給与について、駐在国に於ける費用とすべきという方針を徹底しつつあります。ただつい最近になって現地法人より、立替給与精算においても税務申告が必要になったとの報告がありました。
 どの様な内容なのかご教示いただけますでしょうか?

A 従来、立替精算については税務申告の対象外というのが共通認識でした。言わずもがな、現地法人の費用を日本法人が立て替えた→現地法人は日本法人に返済した、これだけのことです。何の消費も利益も生じていません。しかし2~3か月前より、「税務署から源泉徴収とVATの申告をすべきとの指摘を受けた」という話を耳にする様になりました。当初私は当然のことながら、「単なる立替精算に課税されることはあり得ない」と主張し無視していました。ところが最近になって、当局は「送金先である外国法人は、
送金元の現地法人に対し派遣業務と同様のことを行っているので、これは利益送金と見做す」と、信じ難い見解を示し、送金時には源泉徴収を行い、翌月に申告納税、同時にVATも発生するとして納税(ただし同時に還付分に加算)という、海外に対するサービス料送金と同様の手続きを義務としました。全く納得のいかない内容ですが、当面従う他無いと思います。

2 「受注取消により生じたコストの請求」について
Q 当社は電子部品の製造を行っておりますが、この度顧客側の都合により受注が取り消され、弊社としてはすでに親会社より主要な部品を輸入しており、しかもこれらは他製品に流用できない物で、大きな損害が生じました。この処理方法として、親会社からのコストの請求を受け、さらに顧客に対して請求を行わなければなりません。どの様な証憑を発行したら良いか、また通常の販売とは異なる税務処理がありましたらアドバイスお願いします。

A 先ず仕入に対する親会社からの請求ですが、通常のインボイスまたはデビットノートを発行してもらって下さい。また、御社から顧客へは、インボイスを発行します。その際、これは損害に対する補てん請求ですのでVATは発生しません。

時事コラム2015-2016 第6回「偽ブランド品は無くならない」

身の回りで当たり前に売られていることから、ついついその違法性を忘れがちなのだが、先週3月31日のニュースによれば、当局はバンコク郊外において、押収した偽ブランド品、違法コピー品を1,245,000点、重量にして126トンを破棄処分する式典を行った。

対象となった商品は、衣類、腕時計、携帯電話や映画DVD、コンピューターソフトなどである。

業務用ソフトについてはすでに約10年以上前より政府より委託された民間会社が訪問調査を行い、使用が発覚すれば大枚の罰則金を科すようになったため、正規品を購入するという認識が広まっている。知り合いの日系企業でも以前、会社で購入した基本ソフトは正規品であったが、社員が勝手にコピー・ソフトウェアをダウンロードして使用しており、発覚した1点につき約8,000バーツ、合計約100,000バーツの罰則金を科された例がある。しかしこの調査も個人使用までは及ばず、街のITモールでは相変わらず違法ソフト専門の小売店が堂々と営業している。 

衣料品や腕時計、バッグに関していえばこれは観光客市場よりも庶民の間で完全に定着しており、大市場がある以上これが根絶やしになる日はと考えても予想だにできない。私も電車内でブランド品を見かけると、必ずストラップや部分品を品定めして正規品かどうかを検証する癖がついてしまっている。まず部品の断面を見れば、皮革製なのかPVC(塩化ビニル)製なのかで判断がつくからである。

このような商品を扱う小売店は、観光客向け露店(パッポンやシーロム通り)、都心の大規模ショッピング・モール(マーブンクロン)、郊外の大規模市場(東京ドームより大きいであろうチャトゥチャク)など、一見すれば明白だがその数量から考えてこれを一挙に潰そうなどとは、民業への影響を考えれば、とてもとても当局担当者もその様な勇気を持ちえないであろうことは想像に難くない。但し私は決してこの様なエリアでの買い物をお勧めしている訳ではない。悪しからず。