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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

若者の国カンボジア (その2)

 さて今回の視察旅行の目的は、日系企業としての投資環境、投資規制、その手続きともう一つはカンボジア人労働者のタイ派遣に関してである。

 投資規制は、全くない。「誰でもいらっしゃい」ということである。組織形態としては有限責任会社・パートナーシップ、これらは現地法人なので51%以上の議決権をクメール(カンボジア)国籍を持つ自然人あるいは法人が保有する。外国企業としては駐在員事務所・支店・子会社が認められており、いずれも外資のみでの設立が可能である。

 外国人投資に関する規制もあることはあるのだが、①向精神剤および非合法薬②国際規約・世界保健機関により禁止される毒性化学品・農業用除虫・殺虫剤③大量廃棄物を持ち込む電力事業④森林法により禁止されている森林開拓と、環境汚染や公序良俗に関する規制のみだ。ただし土地の所有のみは許されていない(コンドミニアムは購入可)。

 これは前提となる制度であって、我々が勝負するのは現実にカンボジアの役所はどうなっているのか?カンボジア人は外国人をどう受け入れてくれるのか?である。進出企業を支援する立場としては、現場を把握することが不可欠なのだ。先ずはカンボジア入門ということで、JETROさん、日本人商工会さんにもお邪魔して概略をお伺いしたが、これはあくまで入口の話。ホテルのレセプションで、法人設立登記を行う官庁と、税務登録を行う税務署の場所を聞いてみる。通常彼らにご縁の無い要求をして、現地の方がどの様に対応してくれるのか、これを見極めるのも我々の仕事の内だ。進出企業を支えてくれるのは、実際この人達であるから。

 しかしこれには驚くほど親切に対応して貰えた。ただのホテルマンが官庁の仕組みを理解しているはずも無いのだが、一つ一つネットや電話での問い合わせで答えを出してくれる。それも「恐らくここだと思うが確信は無い。また通常役人はアポを取っていかないと話を聞くのは難しいかも」などと気遣いも細やかな応対である。さらに携帯のプリペイドカードの課金方法を聞くと、ホテルマンは近所まで出向いて支払い、セッティングまでしてくれたのだ。

 さてさて、確信は全くないままだがとにかく行ってみる。税務署(高層ビルまるごとなので、おそらく国税局)では、税務登録はここでは無く裏手のビルだと案内されて行ってみたものの、担当者を呼んでいただいたきり、誰も出てこない。考えてみれば初めて訪れた国の国税局や税務署の本署にいきなり乗り込む失礼な外国人は稀だろう。ここは諦め、法人設立登記を受付るらしいお役所へ移動した。到着してみるとそこは商業省(日本であれば経産省)本省であった。とにかくずんずん入って行き、あちこちで尋ねながら、法人の名称予約を行うカウンターに行き着く。この若い役人さんに設立の手順を尋ねると、丁寧に説明してくれた。「名称予約の後の手続きについては管轄が違うのでここに申請書は無いが、メールアドレスをいただければ後で送ります」とこれも100%の対応であった。そしてその手続き部署を探したが、どうやら見当はずれであった様で、さらに管轄違いの部屋へ突き進んでしまったのだが、またその年配の役人様が、どこかに問い合わせてくれた上で、丁寧にご説明いただいたのである。また上記申請書は、数日後しっかりメールで送られて来た。

 約30年前に同国民による大虐殺が行われ、当時の知識人は根こそぎ犠牲になった。結果、現在この国を支えているのは圧倒的に若者である。また当時国外に亡命した人々の多くも、祖国が民主化された20年前から帰国し、この国の発展に大きく寄与している筈だ。

 この国の将来を担うこの真摯で前向きな若者たちには大いに期待できると思う。皆の明るい表情がそれを物語っている、と感じた4日間だった。
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