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「海外移住で体験したこと考えた事。三十年で出会ったもの」
東南アジアで着実に発展してきたタイ。この激動の時代三十年を起業家として生きた著者の、七転八倒の人生を伝えたい。ビジネスやプライベートで出会った人や家族、市民を従わせる者としか考えない官僚たち、ルール無用の商売人たち、偶然出会ってしまった事故や事件、経験を通し考察したこの国の社会、歴史まで。
著者: 小川邦弘
日本税理士合同事務所タイランド ogawa@nihon-zeirishi-cooperate.com

2015年タイ投資委員会新奨励政策

 2015年1月1日付にて新奨励策が施行され、タイ・ビジネス関係者の間で話題になっている。

 オフィシャルな政策内容詳細についてはJETROを始めあちこちのWEBサイトで解説されているのでそちらに譲りたい。

 奨励対象のビジネス・カテゴリーを見ると、バイオ、ナノ、有機農業、リサイクル、ハイブリット、環境、クラウド、省エネルギーと、世界の経済潮流に習った業種が並んでいる。
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日系企業のタイ進出動向

 動向、といっても私が見た聞いた関わった、という範囲の話である。統計的なものは公共機関の公表するデータにお任せしたい。

 昨年、軍部の政権掌握により政情は安定し、行き過ぎの綱紀粛正は別にしても兎も角経済界も安定期を迎えた。その後はやはり憶測通り、再び日系企業がこの国に押し寄せている。ただし製造業に関しては出尽くした感があり、非製造業、例えばIT企業、商事会社、サービス業各種が殆どを占めている。

 IT企業に対しては、タイ国投資委員会が手厚い優遇条件を維持しているため、例えば外資100%、しかも小資本(最低額100万B、現為替レートで370万円)での進出を認め、さらに外国人労働許可のハードルも下げているため、個人企業も含めかなりの進出企業数となっている。

 またこれまで商事会社に対しては、ローカル企業と競合するということでほぼ優遇措置の対象外であったが、これも条件付きながら、本年より施行されている新ルールにより独資での会社設立の枠が広がった。直接投資の営業機関としての投資委員会が、製造業の進出が減少傾向な現在、他業種進出を奨励しなければという事情はよくわかる。実際奨励事業投資額の半分以上(ここ数年で云えば70~80%)が日本からの投資なのである。

 サービス業に関しては、代表的な飲食業から実に多岐ににわたる業種がやって来ている。美容サロン、スポーツジム、健康食品販売、ネット販売、省エネ・コンサルタント、古典的業種の会計あるいは法律コンサルタントなど、枚挙にいとまがない。

 投資委員会としても新潮流のビジネスを誘致し、「先進国並み」を目指した対応を常に心がけている。例えば上記「省エネ事業」も奨励事業カテゴリーを設定しており、エネルギー省との連携で誘致を図っている。また映像制作も同様で、最近はリモコン・ヘリのドローンを使用した空中撮影の企業もお目見えした。

 ただ省エネ事業については、弊社が手続きを行っている案件について、エネルギー省も投資員会も担当官ご自身があまり新事業のビジョンについて明るくないのでは?と疑問を抱く様な対応に、少々イライラ感がつのっている。こういうことは従来も経験しており、時流に乗った新カテゴリーに於いて、例えばコールセンターやリサイクル事業などで、かなり手間取ったことがある。

 しかしこの様な公務員のユルさというものは、我々手続き業務を生業とする者にとっては「彼らの癖」を理解しておけば逆にイニシアチブを握ることが容易なので、手間はかかるけれど結果は必ず出せるという有り難い状況なのだ。要するに相手の土俵に乗ったふりをしながら軌道修正をさせ、我々は申請データを相手の好みに合う様修正していけば、先方は受け入れざるを得ない、ということである。「お役人さまは神様です。私たち外国人はタイ国の為、タイ国民、タイ経済のために投資を行い、この国で一所懸命働かせていただくのが務めです」な~んていう芝居が打てれば、もう立派なコンサルタントである。

 またいつもの手前味噌で締めくくることにする。

暫定政権による綱紀粛正政策(その2)

 第XXX話においても報告をした、昨今のタイ政府の進出企業に対する実態続編である。

 前話ではタイ国投資員会(BOI)が自ら甘々で認可を与えた認可プロジェクトに対し、事業実態が認可したプロジェクト内容に沿って行われているかを厳格に調査しているという話であった。

 このクライアントさん(IT事業)については、元より認可事業に当たる部分、つまりソフトウェア開発の売り上げが総売上高の10%にも満たず、売上の殆どは親会社から輸入したソフトのカスタマイズおよび販売なのである。奨励が打ち切られることもあり得る状況であったのだが、弊社が逐一、BOIからのデータ提出要請や質問に対する対応をアドバイスし、インタビューにも同行、その後BOI内部での審議を経て、約3か月を要したが何とか事業奨励認可の継続という結果を得た。のでその判断基準が逆に良く分からないのである。想像するに、暫定政権からのお達しに従い、ためにする調査、審議を行っているのではないか。

 さて、その後も他のクライアントさんの手続きにおいて、理不尽とも言える厳格審査の例が相次いでいる。

 弊社にて本年3月の登記手続きから会計税務一切を依頼されている輸出企業に関わるものである。3月20日、商業開発省における法人設立登記が完了、翌日には管轄税務署にて付加価値税登録を申請、受理されている。通常はその後一か月程度でその登録証(ポーポー20、当地では官公庁に関わる申請書や証明書の書式の殆どにこの様な略称がある)。例えばこのポーポーとは、付加価値税、タイ語でPaasii Rakkhaa Phuumの頭文字からタイ文字でภ.พ.と表記され、付加価値税に関わ
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るすべての書式はポーポー何番と呼称される。話が逸れたが、実務上、この登録証が無くとも受理された申請書(ポーポー01)のコピーを保管していさえすれば毎月の申告に支障が無いため、当法人のポーポー20が送付されないまま半年が経過してしまった。そろそろ年次決算の準備を始めるこの時期になって担当マネージャーが税務署に問い合わせると、「審査担当が交代しており、この登録に関しては追加書類の提出が必要である」と寝耳に水の回答があった。その書類とは、
① 看板を視認できる事務所入り口と内部の写真(申請時に提出済み)
② 事務所の賃貸契約書(同上)
③ ビル・オーナー側の施設使用許可証(同上)
申請受理された半年後になって提出済みの書類を再度提出とは呆れ果てたものだが、さらに「調査したところこの事務所は会計事務所と同一住所にあり、会社法上登記は許可されない筈」とまで云われた。まず、当のビルは土地建物登記局の登記上、部屋番号が表記されていないため、全く無関係の7社の登記上所在地がすべて同一なのである。そして何よりも、商業開発省登記局がすでに登記申請を受理し手続き済みの法人を税務署が認めない??よしんば登記後に制度が変更されたとしても法制上「不可逆訴求」によりその地位や権利は侵されないというのが世界の常識だ。もし私が当の審査官と直接話をしていたらひと悶着あったのは確実だが、それはクライアントさんの利益にならないのでマネージャーに任せ、手続きは済んだ様である。

 さらに、当法人がその直後2名の従業員を雇用し、即座に社会保険加入の手続きを行ったが、またもや上記賃貸関連書類の提出を追加提出させられた。いったい何を目的とした厳格化なのか、法常識も整合性もまるで無視した対応に驚く。

 この様な状況では、私自身が前面に立つことを極力避けるしかあるまい。軍事政権イコール反民主主義という、欧米を中心としたテレタイプ式批判にはかなり嫌悪を抱く私だが、今はちょっと賛成。

タイ国 外国人事業法

 当地では外国人事業、つまり法人であれば外国資本の出資比率が49%を超える会社組織に対し3種の制限業種を定め、この様な事業を禁止している。

第1種 新聞発行やテレビ放送、農漁業、不動産売買等々「特別の理由により外国人が営むこと
   のできない業種」
第2種 
 1類 武器や航空機、船舶の製造販売補修、国内輸送や国内航空等の「国家の安全に関する事
   業」
 2類 養蚕、シルク、美術品や伝統工芸品の製造等「芸術、伝統、民芸品に影響を与えるもの」
 3類 砂糖黍からの製糖、塩田でのまたは岩塩からの製塩、鉱業、木材加工等の「天然資源ま
   たは環境に影響を与える事業」
第3種 精米、水産養殖、会計・法律サービス、建築、仲介業、競売業、小売・卸売業、広告業、
   ホテル業、観光業、飲食店、種苗・育種業、その他サービス業等々の「外国人との競争力が
  まだついていない事業」
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暫定政権による綱紀粛正政策

 本年5月末近く、陸軍司令官によるクーデター、そして司令官自身による暫定政権樹立、組閣が行われ、それは多くの市民に歓迎された。そして政治騒動に明け暮れた半年間にもたらされた景気悪化、行政の停滞そして集票の為に前政権が行ったバラまき政策による負の遺産からの脱却に対する新暫定政権の努力は、景気回復と相まって当地の各方面から高評価を受けている。
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